OpenFrameの構成
本章では、OpenFrameのアーキテクチャと構成要素について説明します。
1. OpenFrameのアーキテクチャ
OpenFrameはメインフレーム環境の業務システムをオープン環境に移行させ、運用できるようにするリホスト・ソリューションです。移行する業務アプリケーションの特性に応じてオンライン業務とバッチ業務に区分し、移行対象の業務に合わせてオンライン製品(OpenFrame AIM)とバッチ製品(OpenFrame Batch for XSPまたはMSP)を提供します。
OpenFrameを導入すると、メインフレーム・システムのアプリケーションと既存のデータをそのままUNIX環境で運用することができます。弊社のエンタープライズ・ミドルウェアのTPモニターであるTmax上で運用されるOpenFrameは、弊社のWebサーバー、Webアプリケーション・サーバー、バッチ・ソリューション、フレームワーク、APM、セキュリティ、ストレージなどの最新技術と連携して使用できるように設計されています。
下の図は、OpenFrameの構成を示しています。

2. OpenFrameの構成要素
OpenFrame MSP(XSP)は、Base、Batch、TACF、AIM、NDBとOpenFrame GW、OpenFrame Managerで構成されます。
2.1. OpenFrame Base
OpenFrame Baseは、OpenFrame AIMとOpenFrame Batchで共通して使用されるモジュールと基盤サービスを1つのパッケージにした製品です。そのため、Baseシステムはオンライン業務、バッチ業務に関係なく基本的にインストールされる必要があります。
OpenFrame Baseは既存のメインフレームのOSレベルのリソースとサービスに対応する機能を提供するシステムです。特に、UNIXシステムには存在しないけれど、リホストの全般にわたって必要なメインフレーム・システムの独創的な概念をUNIXシステムで実装しています。これは、OpenFrame AIMやOpenFrame Batchなどのサブ製品の共通基盤として使用され、相互連動に重要な役割をします。
Baseシステムは、Tmaxエンジン、データセット、コードページ、コンソールで構成されます。
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Tmaxエンジン
Tmaxは分散システム環境で異種端末間のトランザクション処理を保証しつつ、負荷を分散させ、エラーの発生時に適切に措置するTPモニター製品です。主要機能はプロセス管理、トランザクション管理、負荷調節およびフェイルオーバー対策です。
OpenFrameソリューションは、Tmaxエンジンを基盤に開発されており、マルチノード・クラスタリング、負荷調節およびフェイルオーバー機能を継承し、メインフレームが提供していた高可用性と安定性を保証します。
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データセット
メインフレームではOSレベルでレコードI/Oおよびトランザクションをサポートする多様なデータセットを使用できます。一方、UNIXファイル・システムでは基本的なブロック単位の読み書き機能だけ提供します。
Baseシステムでは弊社が保有しているリレーショナル・データベース技術を応用し、メインフレーム上のデータセット機能をオープン環境で実現するために、データセット・モジュールとサービスを提供します。
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コードページ
通常、メインフレームのユーザー・データはEBCDIC(JEF)コードセットで保存されています。一方、OpenFrameソリューションはオープン環境の標準であるASCII(Shift-JIS)コードセットでユーザー・データを保存します。
したがって、メインフレームのデータをオープン環境に移行する場合や、逆にメインフレームとの業務連携のためにオープン環境からメインフレームにデータを送信する場合に文字コードの変換が必要となり、コード変換に使用されるマッピング・テーブルのコードページを管理する必要があります。
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コンソール
システム・コンソールまたはコンソールはシステム・カーナルでシステム管理者にメッセージを出力し、システム管理者がシステム管理コマンドを入力できる画面とキーボードを意味します。メインフレーム管理者は提供されるコンソールを使ってシステムを管理・運用します。
一部のメインフレーム・システムでシステム・コンソールは、メインフレームの管理用途でのみ使用するのではなく、特定の業務アプリケーションの実行時にリアルタイムで必要なデータをアプリケーションに直接入力できる窓口の役割もします。OpenFrameではこうしたメインフレームのコンソール機能を提供するため、仮想のコンソール・インターフェースを提供します。
2.2. OpenFrame Batch
OpenFrame Batchは、OpenFrameを構成する製品の1つで、メインフレームで実行していたバッチ作業を、JCLや業務ロジック、データの修正を最小限に抑えながら、低コストのオープン環境で運用できるようにする製品です。
OpenFrame Batchの特徴は以下のとおりです。
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JCLやバッチ・アプリケーションのコード修正が不要
業務ロジックを変更せず、メインフレームで実行してきた業務プログラムをそのままオープン・システム環境で実行することができます。JCLや業務プログラムの変更をせずに使用できるため、プログラムの再開発によるリスク負担を軽減できます。
OpenFrame Batch for XSPはXSP JCLをサポートし、OpenFrame Batch for MSPはMSP JCLをサポートします。
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多様なUNIXアプリケーションとの連携および拡張が容易
UNIXシステムで提供する多様なアプリケーションを使用できるため、新しいバッチ・ジョブの開発が容易になります。
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複数のUNIXサーバーを1つのバッチ・システムのように使用して分散処理環境を構築することが可能
バッチ・ジョブの増加によって発生する負荷をTmaxや物理的なサーバーの増設で分散させ、問題を解決します。
TPモニターのTmaxを基盤システムにして開発されたOpenFrameでは、データベース障害やハードウェア障害などの問題が発生した場合にも、優れたフェイルオーバー機能を利用できるため、バッチ・ジョブの実行に影響を与えません。
Tmaxサーバーの自動監視を通じた自動復旧機能を提供します。
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各種ユーティリティおよびツールを利用した便利なシステム管理機能を提供
移行作業に必要な多様なユーティリティやツール、ユーティリティ開発のためのライブラリを提供します。既存のXSPまたはMSP JCLで使用してきた様々なユーティリティ・プログラムをバッチ環境で実行できます。
下の図は、OpenFrame Batchシステムのアーキテクチャを図式化したものです。

OpenFrame Batchの構成要素は以下のとおりです。
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TJES
メインフレームのJESに対応するOpenFrameシステムのバッチ・ジョブ管理システムです。JCLによりユーザーからジョブを受信し、これをシステムのリソース状況に応じてスケジューリングした後、ランナーを利用して実行し、ジョブの実行結果をプリントし確認するなど、OpenFrameで行うすべてのジョブ関連作業を管理します。
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UTILITY
既存のメインフレームで提供していたデータセット操作関連のユーティリティをオープン環境でも同様に提供しています。さらに、メインフレームで使用されていたサード・パーティー・ユーティリティも、従来と同様に使えるようにインターフェースを提供しています。
JCLのPGMに記述されるユーティリティは、該当するジョブを送信した際に実際にバッチ・ジョブを実行するプログラム要素であり、機能によって多様なユーティリティを提供します。
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TOOL
メインフレームで使用してきたデータセットやデータベースなどのマイグレーションや、OpenFrameシステムの運用の際に必要な様々な機能を提供します。
2.3. OpenFrame TACF
メインフレームのRACFに対応する製品で、OpenFrameで認証やリソースへのアクセスを制御します。
OpenFrame TACFの特徴は以下のとおりです。
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ユーザー認証
OpenFrameシステムにアクセスするユーザーに対し、適切なユーザーであるかどうかを確認するプロセスです。ユーザーIDとパスワードが必要であり、認証に失敗したユーザーはシステムやシステムが提供するリソースへアクセスできません。
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リソース・アクセス制御
リソース・アクセス・リストに従って、ユーザーごとに特定リソースへのアクセスを制御します。
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リソース・アクセスの記録
システム接続時間、アクセス回数、アクセスしたリソースの統計情報を記録するので、システム管理者が各種リソース統計やリソースのセキュリティのリスクをチェックすることができます。
OpenFrame TACFは、Tmaxクライアント/サーバーとAPIライブラリで構成されています。
以下は、OpenFrame TACFの動作プロセスについての説明です。

リソース・マネージャーに特定リソースへのアクセスが発生すると、リソース・マネージャーはそのアクセス権限をTACFサーバーに要求します。TACFサーバーは定義されたアクセス権限をTACFデータベースから検索し、当該アクセス要求に応じるかどうかの応答をリソース・マネージャーに返します。このように、リソースへの個別アクセスを統合管理します。
2.4. OpenFrame AIM
OpenFrame AIMは、OpenFrameのOnlineで提供するシステム・タイプのうち、富士通AIM環境をリホストするためのシステムです。トランザクション処理ミドルウェアであるTmax上で運用されるため、AIMシステムを理解するにはTmax製品に関する理解が必要です。
OpenFrame AIMシステムは、既存の富士通AIMで行われていたトランザクション・サービスと同一または類似したサービスをUNIXなどのオープン環境で提供します。また、既存の環境で開発された各種の業務プログラムをオープン環境でも業務ロジックやコードの修正なしでそのまま運用できるようにします。
以下は、OpenFrame AIMシステムの特徴です。
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各サーバー・プロセスは最適の環境下で業務を処理
OpenFrame AIMのアプリケーション・サーバーは1つ以上のプロセスで構成されます。したがって、クライアントから多数のトランザクション要求を受けると、プロセス・スケジューリング機能により最適の業務環境でトランザクション要求を処理します。
業務負荷に合わせて自動でサーバー・プロセスの数を制御し、効率的に分散処理が行えます。
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業務要求に対し同時に並列トランザクション処理が可能
設定ファイルやRTSD(Run-Time System Definition)などの機能により、同じアプリケーション・サーバーの全プロセスが同時に同じリソース・サービスを提供することができます。1つのアプリケーション・サーバーは、メインフレームAIMの1つのジョブにマッピングされます。
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AIM業務プログラムを、業務ロジックの変更なしに、OpenFrame AIMアプリケーション・サーバーでそのまま動作可能
OpenFrame AIMシステムは、メインフレームのサブシステムに対応するOpenFrame製品により、既存のAIMシステムで提供していたリソース・サービスと同一または類似したサービスを提供します。
OpenFrame AIMシステムは、既存のAIMで開発されたユーザー・プログラムで使用できるよう、アプリケーション・プログラム・インターフェースを提供します。また、既存のAIMシステムの構築に使用したADL文などのリソースを変更せずに移行することができ、既存のユーザー業務プログラムを簡単なマイグレーション作業だけでオープン・システムで活用できます。
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各種ツールとユーティリティを利用した便利なシステム管理機能を提供
TPモニターのシステム管理ユーティリティ・プログラムを一緒に活用できます。また、弊社のAPM製品であるSysMasterと連携して、サーバー・プロセス状態の照会、サービス件数やサービス処理時間などのモニタリングができます。
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OpenFrame AIMシステム・ログの照会、サービス・リソース定義の作成・照会・修正が可能です。また、OpenFrame AIMサーバーの状態、各種の設定情報、接続ターミナル情報を含むシステム状態の照会サービス機能を提供します。既存のメインフレームでAIMシステムの運用に使用されてきたコマンドやコンソール・ベースの機能をGUIで提供します。
下の図は、OpenFrame AIMシステムのアーキテクチャを図式化したものです。

OpenFrame AIMシステムは以下のように構成されます。OpenFrame AIMでトランザクションの要求は、TN3270エミュレーターを使用して行えます。
区分 | 説明 |
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OpenFrame GW |
外部端末(ワークステーション)の接続とメッセージの送受信を処理するモジュールです |
AIMOMSVR |
アプリケーションを操作および管理するサーバー・プロセスです |
AIMDCMS |
端末またはアプリケーション間のメッセージ・キューイングと送受信を管理するサーバー・プロセスです |
AIMAPSVR |
ユーザーが作成したアプリケーションを実行および管理するサーバー・プロセスです |
2.5. OpenFrame NDB
OpenFrame NDBは、富士通メインフレームのAIM/DB製品に対応するTmaxSoftのOpenFrame製品です。
下の図は、OpenFrame NDBシステムのアーキテクチャを図式化したものです。

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OpenFrame NDBの中核
OpenFrame NDBの中核領域です。入力されたADLを分析したりNDBデータを処理し、関連するメモリ・バッファーやストレージなどを管理します。
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インターフェース
富士通のAIM/DBと同じインターフェースを提供して、既存のCOBOL、PL/I、Cプログラムをそのまま使用することができます。
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スキーマ情報
ndbadlgenツールを使用してスキーマ情報に基づいてメタ・データをOpenFrame NDBメタ表に保存します。ndbadlgenツールについての詳細は、OpenFrame NDB『ツールリファレンスガイド』を参照してください。
2.6. OpenFrame GW
OpenFrame GWは、メインフレーム・リホスト・ソリューションのOpenFrameを構成する製品の一つで、複数の3270端末をリアルタイムで管理および監視し、オンライン製品(OSC、IPF、AIM)と端末の間でデータ処理、トランザクション、および端末の管理を行います。
OpenFrame GWはWebアプリケーション・サーバー上でWebサーバーとして実装され、データベース(Tibero)には現在接続している端末、起動しているオンライン・リージョンの情報が保存されます。
OpenFrame GWは以下のようなサービスを提供します。
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アプリケーション・プログラムと端末間の接続管理
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アプリケーション・プログラムと端末間のデータ転送
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アプリケーション・プログラム間の端末共有
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端末接続のためのLU名の自動割り当て
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ネットワーク操作の監視および管理
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Webブラウザーを介して3270エミュレーターを提供
OpenFrame GWの特徴は以下のとおりです。
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端末の開始と終了、およびアクセス制御
アプリケーション・プログラムから端末の接続を終了することができ、設定によって端末に接続することができます。割り当てられたリソースに基づいて端末の接続を制御します。
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Web端末の使用
OpenFrame GWはWeb端末を提供します。このWeb端末は、OpenFrame GW内部で3270データ・プロトコルを維持し、Web上で3270プロトコル・エミュレーターと同様に使用することができます。
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データベースによるリソースの共有
使用可能なアプリケーション・サーバーと関連リソースをデータベースを介して共有します。

OpenFrame GWの特徴と各サーバーの詳細については、OpenFrame GW『管理者ガイド』を参照してください。 |
2.7. OpenFrame Manager
OpenFrame Managerは、OpenFrameで開発、制御、管理、分析を行うための製品です。OpenFrame ManagerはWebベースのクライアントとJavaで開発されたサーバーで構成されます。
Base、Batch、TACF、AIM製品の制御と管理、監視を行うCommon Manager、Batch Manager、TACF Manager、Online Managerで構成されます。
OpenFrame Managerの特徴は以下のとおりです。
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OpenFrameのユーザー・インターフェース
OpenFrameの運用に必要な全般的なWebユーザー・インターフェースをサポートします。UNIXオペレーティング・システムやOpenFrameシステムに対する充分な理解がなくても、簡単に使えるユーザー・フレンドリなGUIを提供しています。
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TACF認証
設定ファイルの認証タイプをTACFに設定する場合、OpenFrame独自の認証システムであるTACFと連携した認証機能を使用できます。この場合、TACFマネージャーを使用して個別のリソースに対してユーザーごとに異なる認証権限を登録することができるので、ユーザーごとに権限を制御することができます。