リホスト・ソリューション

本章では、リホストの概念について説明します。

1. 概要

一般に、特定の環境下で運用していた業務システムを他の環境へ移行すると、業務システム上に様々な変化が生じます。

メインフレームで運用していた業務システムをオープン・システムへと再構築・再開発する場合、ハードウェアやオペレーティング・システムなど様々な要因によって業務システムの変更に伴う変換対象の範囲が拡大します。したがって、既存の業務を分析し、全面的にシステムを再開発する場合、業務システムの移行には多額のコストと長時間、多数の労力が必要になります。

これに対し、リホストはソリューションを利用し、メインフレームが提供してきた業務環境をオープン環境へ移行する方法です。すなわち、ソリューションが提供する業務システムの変換手続きを踏むことで、オープン環境へと業務ロジックを切り替えることができます。リホストは業務システムに実装されたユーザーの業務ロジックをほとんど変更しないため、再開発(ビックバン)に比べて短期間、低コストで業務システムを移行することができます。

OpenFrameは、最も有効なリホスト・ソリューションとして、メインフレームで運用していたユーザーの業務システムを再構築・再開発することなく、オープン環境のUNIXシステムで運用することを可能にするソリューションです。OpenFrameシステムに移行することで、メインフレームで求められたアプリケーションやサービス・インタフェース機能などをUNIXシステムでも使用することができます。

本章では、リホストを含む様々なダウンサイジング方法を紹介し、その中からリホストが注目される理由について説明します。また、マイグレーションの概念について説明し、最後にOpenFrameソリューションを利用したリホストについて説明します。

2. メインフレーム・ダウンサイジング

ダウンサイジングとは、メインフレームで使用してきたアプリケーションを小型コンピューターであるワークステーションなど、比較的に小規模のコンピューターで構成された分散システムで実行できるように構成することを意味します。

メインフレームのダウンサイジングを検討する主な理由としては、Webサービス提供の難しさ、運用コストの負担、システム(ハードウェア、ソフトウェア)の老巧化、プログラム・メンテナンスの難しさなどが挙げられます。

メインフレームのダウンサイジング方法には、次の3つがあります。

  • ビックバン(Big-Bang)

    ハードウェアの全面取替えおよび再開発を要します。オープン環境で業務を全面再開発することで、ユーザーが求める様々な要求事項を受け入れることができます。

    しかし、新しいプラットフォームやシステムの構築、ビジネス設計を同時に行わなければならないので、多大なコストと時間がかかる上に、新規開発に伴う安定性の問題が危惧されます。

  • リホスト(Rehosting)

    既存のアプリケーションを再使用しながらオープン環境に移行します。

    コストを軽減し、システムの柔軟性を高めるダウンサイジング方法の1つです。既存のアプリケーションを再使用しつつオープン環境に移行するため、最新トレンドを反映したシステム環境を構築しやすいメリットがあります。

    アプリケーションとデータを再使用するので、ダウンサイジングする際のリスクを最小限に抑えることができます。また、既存の運用方式やリソースを最大限に再活用するため、運用におけるリスクも低減できます。

    コスト面では、短期間でコスト軽減効果を最大化できるため、次世代システムの構築にかかるコスト負担を軽減することができます。ただ、新規の業務要求を受け入れるために、一部の業務を再開発することもあります。

  • ハイブリッド(Hybrid)

    メインフレームとUNIX環境が共存する方式です。メインフレーム業務のうち、UNIXに適した一部の業務をオープン環境に移行します。

    この方法は、インフラ構造が複雑になるうえ、ダウンサイジングに多大な時間とコストがかかります。既存のメインフレームで処理してきた業務をUNIXで処理する際に問題がなければ、今後リホストの必要性が提起される可能性があります。また、両システムが共存することにより、相互連動やメンテナンスにも困難があります。

ダウンサイジングは、メインフレーム・リホストの上位概念にあたります。

3. メインフレーム・リホスト

メインフレーム・リホストとは、ハードウェアをメインフレームからUNIXサーバーに切り替え、メインフレームで使用してきたソフトウェアとデータを、移行作業(マイグレーション・プロセス)だけでそのまま使用できるようにする技術です。

リホストはシステムをオープン環境へ全面再開発する方法とは異なり、マイグレーション・ツールを利用して、メインフレームで使用してきたユーザー・アプリケーションとデータをUNIX用に移行して使用します。(ただし、メインフレームで使っていたソフトウェアは使用できません。)

リホストが注目される理由は、何よりも全面再開発にかかるコストと時間の負担を軽減できるからです。一般に、リホストではメインフレームを維持する時に比べ、5年経過した時点で最低で約35%の運用コストの軽減効果があり、運用の効率性や安定性、追加開発の容易性が向上するとされています。さらに、既存のリソースを活用できることや現実的に情報システム要員の交替による問題などを抑制できることもリホスト・ソリューションが注目される理由です。

4. メインフレーム・マイグレーション

マイグレーションは、メインフレームをUNIXに切り替えたり、UNIXシステムをLINUXや.NETベースに切り替えたりするように、既存のシステムを新しいプラットフォームに切り替える作業を意味します。メインフレーム・マイグレーションといえば、一般にUNIXなどのオープン環境への移行を意味するため、「オープン環境への移行」と同様の意味で使われます。

メインフレーム・マイグレーションもメインフレーム・リホストの上位概念といえます。ダウンサイジングがコンピューターの規模に焦点を当てた用語だとすれば、マイグレーションはプラットフォームの切り替えに重きを置いた用語です。

メインフレーム・マイグレーションの詳細については、OpenFrameによるマイグレーションとOpenFrame『マイグレーションガイド』を参照してください。

5. OpenFrameソリューションを利用したリホスト

OpenFrameは、メインフレーム上で運用していたリソースを短期間でダウンサイジングできる最適なソリューションです。OpenFrameを利用したリホストは、オープン・システムの構築、ソリューションの導入、マイグレーションのプロセスをたどります。

下図は、富士通メインフレームおよびOpenFramのアーキテクチャと、両システムに存在する個別モジュールの関係を示したものです。

figure 1 1 fujitsu
リホスト前後の比較

「リホスト前後の比較」に示したように、ハードウェアを富士通メインフレームからUNIXに切り替えた後、既存のメインフレームで使用していたシステムに対応するOpenFrameソリューションを導入します。たとえば、オンライン・トランザクションを処理する富士通メインフレームのAIMに対応してはOpenFrame AIMを導入し、富士通メインフレームのXSPまたはMSPジョブ管理システムに対応してはOpenFrame Batch for XSPまたはMSPを導入します。その後、各システムに適切なマイグレーション・プロセスを実行します。

アプリケーションやリソースの種類によってOpenFrameへのマイグレーションの手順に多少の差がありますが、メインフレーム・ベースのEBCDIC(JEF)文字セットをUNIXベースのASCII(Shift-JIS)文字セットに変換するプロセスは、リソースの種類を問わず、すべてのマイグレーション・プロセスで同様に行われます。

OpenFrameソリューションを利用してマイグレーションする際には、一般的にリソースをアプリケーション、データセット、データベースに区分して別々にマイグレーションを行います。

マイグレーションの詳細については、OpenFrameによるマイグレーションを参照してください。