OpenFrame Batchの機能
本章では、OpenFrame Batchシステムを構成するTJES、ユーティリティ、ツールについて説明します。
1. TJES
TJES(Tmax Job Entry Subsystem)は、富士通メインフレームのJESに対応するOpenFrameシステムのバッチ・ジョブ管理システムです。
TJESはユーザーからジョブを受け取り、ジョブ・グループとジョブの実行優先順位に従ってスケジューリングしてランナーを介して実行し、出力用データをプリンターに送信するプロセスを管理します。
TJESシステムは1つのシステムで構成されるのではなく、基盤システム上にTmax、Baseシステム、ロック・サーバー、Tmax Access Control Facility(以下、TACF)などのサブシステムで構成され、各システムと有機的に相互作用します。

Baseシステムは、TJESシステムがJCLに記述されたジョブを起動および実行するために必要なデータセットの入出力機能やカタログ管理などのデータ操作(レコードの読み書き)機能を提供します。TJESシステムは、ジョブの実行に必要な入力とジョブの実行結果を保存するスプール・データセットという独自のストレージを使用しています。
OpenFrame/Baseシステムの詳細については、OpenFrame Base 『Baseガイド』を参照してください。 |
以下は、TJESの機能です。
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ロック
TJESシステムはスケジューリング・ポリシーに従って複数のジョブを並列で実行します。各ジョブは、データセットの入出力を行う際、データセットの独占的な使用を保証するため、ロック・サーバーにデータセットのロックを要求します。そして、ロック・サーバーは、そのデータセットにロックを実行します。ただし、すでに他のジョブによってロックされているデータセットの場合は、先行ジョブがロックを解除するまで待機します。つまり、TJESシステムは同じデータへの同時アクセスを制限するため、データの整合性が保証されます。
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セキュリティ
バッチ・ジョブは多くのリソースを使用します。システムにおいてリソースは重要な要素であるため、任意のユーザーからリソースを保護する必要があります。そのため、TJESシステムがバッチ・ジョブを行う際、リソースにアクセスする時点でアクセス権限が付与されているユーザーであるかどうかの判断をTACFに依頼します。TACFは、そのリソースへのアクセス権限の有無を確認してTJESに通知します。これにより、システム・リソースへの不正アクセスを防ぎ、システムの重要なリソースを保護できます。
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Tmaxとの連携
TJESシステムは、TmaxSoftのTPモニターであるTmaxをベースとするため、他ベンダーのシステムよりも安定したマルチ・ノードを構成して分散処理を行うことができ、一貫性のあるフェイルオーバーを実現します。
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分散処理
TJESのすべてのプログラムはTmaxサーバーとして構成されており、ジョブを実行するプロセスは、Tmaxサーバーのサービスを呼び出す形で実現されます。バッチ・ジョブの増加によって負荷が発生した場合は、Tmaxを介してロードバランシングを行うか、物理的にサーバーを増設して負荷分散を行い、問題を簡単に解決することができます。
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フェイルオーバー
システムの運用中に障害が発生しても、システムを停止することなく継続して使用できる必要があります。TJESシステムでは、特定のノードのTmaxサーバーが異常終了すると、Tmaxがその障害を自動的に検知してサーバーを再起動します。
また、特定のノードが回復不可能な状態になった場合は、そのノードへの要求は自動的に他のノードに転送されるため、障害が発生したノードからの影響を受けることなく、バッチ・ジョブを続行することができます。
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2. ユーティリティ
ユーティリティはJCLのEX文に記述され、そのジョブを送信した際に実際に実行されるプログラム要素です。
ユーティリティはOpenFrame Batchシステムで提供されるプログラムであり、非VSAMデータセットを管理するためのユーティリティと、データをソート/マージするSORTユーティリティがあります。
2.1. データセットの作成・削除・変更
データセットを作成、削除、変更するためのユーティリティは、メインフレームがデフォルトで提供するユーティリティとして、データセットの削除、名前の変更、カタログ、アンカタログ、移動、コピー、マージ、修正などのデータセットの一般的な作業に対して利便性の高い機能を提供します。
データセットの作成、削除、変更のためにOpenFrameが提供するユーティリティは以下のとおりです。
ユーティリティ | 説明 |
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CTFE |
CTFE(Catalog File Editor)は、データセットをカタログに登録、変更、削除するか、特定のデータセットのカタログ登録情報を出力します。 |
FCHK |
FCHK(File Check)は、直接アクセス・ボリュームに存在するデータセットのデバイス・タイプ、ボリュームのシリアル番号、ファイル名などのデータセット関連の属性を出力します。 |
FCPY |
FCPY(File Copy)は、直接アクセス・ボリュームまたは磁気テープ・ボリュームのデータセットをコピーします。 |
FDLT |
FDLT(File Delete)は、直接アクセス・ボリュームに存在するデータセットを削除します。 |
FDMP |
FDMP(File Dump)は、直接アクセス・ボリュームまたは磁気データ・ボリュームに存在するデータセットの属性および内容を編集して印刷します。 |
KQCAMS |
KQCAMSはデータセットの作成、削除、名前の変更、カタログ、アンカタログ機能に加え、カタログを管理します。 |
各ユーティリティの詳細については、OpenFrame Batch 『ユーティリティリファレンスガイド』を参照してください。 |
2.2. SORTユーティリティ
SORTユーティリティは、SORT/MERGE文に従ってレコードを順次ソートするか、複数のファイルを1つのファイルにマージする機能を実行します。また、レコードのソートやマージのほか、レコードの選択、編集、フィールドの合計を計算する付加機能も実行します。
OpenFrameのSORTユーティリティは、レコードのソートとマージを直接実行するのではなく、サードパーティーUNIXソート・プログラムがソートを実行できるように、サードパーティーUNIXソート・プログラムとBatchシステムの間のインターフェースとして機能します。
これにより、特定のUNIXソート・プログラムに依存することなく、ユーザーのニーズに応じて多様なUNIXソート・プログラムと簡単に連携することができます。
メインフレームでは、SORTユーティリティを使用するためにはSORT/MERGE文を作成する必要があります。SORT/MERGE文は、UNIXソート・プログラムが理解できない形式のため、OpenFrame SORTユーティリティでは、これらの制御文をUNIXソート・プログラムが理解できる形式に変更してUNIXソート・プログラムに渡し、UNIXソート・プログラムがレコードをソートまたはマージできるようにします。
SORT/MERGE文と同様に、UNIXソート・プログラムはOpenFrameで使用するデータセットを直接読み書きできないため、OpenFrame SORTユーティリティがデータセットをレコード単位で読み込んでUNIXソート・プログラムに渡したり、UNIXソート・プログラムからソートまたはマージされたデータをデータセットに書き込んだりする役割をします。
現在のOpenFrameでは、TmaxSoftのProSort、富士通のPowerBSORT、syncsortのSyncSortといった3つのサードパーティー・ソート・プログラムと連携できます。
ユーティリティ | 説明 |
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SORT |
与えられたSORT/MERGE文に従ってレコードをソート、マージ、コピー、フィルター、再編集、合計などを実行します。 |
各ユーティリティの詳細については、OpenFrame Batch『ユーティリティリファレンスガイド』を参照してください。 |
2.3. その他
以下は、OpenFrameが提供するその他のユーティリティです。
ユーティリティ | 説明 |
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DSDIFF |
データセットのレコードごとの違いを表示します。 |
ICETOOL |
SORTユーティリティ・プログラムを使用して1つのジョブ・ステップで複数のデータセットを出力するために使用します。 |
IEFBR14 |
テスト用のダミー・ユーティリティです。 |
KEQEFT01 |
TSOコマンドやデータベース接続を実行します。 |
LIBE |
直接アクセス・ボリュームに存在するデータセットをコピーします。 |
各ユーティリティの詳細については、OpenFrame Batch『ユーティリティリファレンスガイド』を参照してください。 |
3. ツール
Batchシステムでのツールは、バッチ・ジョブの実行には直接使用されませんが、TJESで使用されるシステム・データセットを作成または初期化するか、外部スケジューラーからバッチ・ジョブのサブミットを受け取るなど、OpenFrameシステムの運用に必要な機能を提供しています。
以下は、Batchシステムが提供するツールです。
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TJESシステムの初期化ツール
ツール 説明 tjesinit
TJESが使用するシステム表とスプール・データセットを初期化します。
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運用上の利便性を高めるツール
ツール 説明 dlclean
一時データセットに移動させた既存のライブラリを自動的に削除します。
dlupdate
旧バージョンのユーザー・ライブラリを新しいバージョンに変更します。現在使用中のユーザー・ライブラリを終了せずに変更することができます。
textrun
Control-MまたはA-AUTOなどの外部スケジューラーからサブミットされたバッチ・ジョブを監視し、実行が終了したら実行結果を外部スケジューラーに通知します。
各ツールの詳細については、OpenFrame Batch『ツールリファレンスガイド』を参照してください。 |