概要
本章では、OpenFrame OSCシステムを紹介し、特徴と構造および起動方法について説明します。
1. OpenFrame OSCの紹介
OpenFrame OSC(以下、OSC)は、メインフレーム・リホスト・ソリューションのOpenFrameを構成する製品の1つであり、CICSのオンライン業務を簡単な移行手続きでオープン・システムで運用できるようにする製品です。
一般的に、メインフレームのオンライン業務システムをオープン・システムに移行するとき、以下のような課題が想定されます。
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メインフレームの機能、性能および安定性をどのように提供するか
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簡単に移行できるか
OSCは、メインフレームCICSと同等の機能を提供します。性能と安定性の問題を解決するために、オープン・システムでの性能と安定性が検証されたTPモニターのTmaxエンジンをベースとしています。
TmaxエンジンをベースにしたOSCは、次のようなTmaxの特徴を持ちます。
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便利なプロセス管理
OSCで作成されたプロセスはTmaxにより起動から終了まで管理されます。Tmaxが提供する多様なモニタリング情報を使用できるので、プロセスの管理が容易になります。
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大容量トランザクションのサポート
Tmaxには、大容量トランザクション処理のスケジューリング機能やサービス・キューの管理機能が組み込まれています。Tmaxはオープン環境のミッション・クリティカルな業務システムに適合しています。TmaxをベースにするOSCも大容量のトランザクションを安定的にサポートします。
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ロード・バランシングとフェイルオーバーのサポート
IBMメインフレームのマシンに比べ、オープン・システムのマシンは小型です。そのため、IBMメインフレームの業務をオープン・システムに移行する場合は、2台以上のマシンでハードウェアを構成します。2台以上のハードウェアでアプリケーションを構成するには、マシン間の負荷分散や障害対策が重要になります。OSCでは、Tmaxのロード・バランシングおよびフェイルオーバー機能により、ハードウェア・レベルの問題が解決されます。
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オープン環境における自由な連携
連携はリホストに直接関わる問題ではありません。しかし、システムを拡張したり他のシステムと連携したりする状況は頻繁に発生します。TmaxはX/Open DTPモデルに準拠するTuxedoのような他の商用TPモニターと連携することができ、OSCで作成されたアプリケーション・システムは容易に拡張できるので、OSCは他のリホスト・ソリューションに比べて優れたメリットがあるといえます。さらに、弊社のWebアプリケーション・サーバーであるJEUSなどのWeb環境との連携も可能です。TmaxをベースにしたOSCは、大量高速処理が必要な大型オンライン・アプリケーション・システムのリホストを実現します。
OSCは、CICSのトランザクション・サービスをUNIXなどのオープン環境でも同じレベルで提供します。さらに、CICSの各種アプリケーション・プログラムを、業務ロジックやコードの修正なしにオープン環境でも同様に運用できるようにします。OSCはマイグレーションを容易にするために、IBMメインフレームCICSの業務をそのまま適用できるインターフェースを提供しています。また、CICS上で開発されたユーザー・プログラムで使用されるEXEC CICS文、EXEC DLI文、およびCBLTDLI関数も提供しています。
OSCシステムのその他の特徴は、以下のとおりです。
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各サーバー・プロセスは最適な環境下で業務を処理
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OSCアプリケーション・サーバーは1つ以上のプロセスで構成されます。クライアントから多数のトランザクション要求があった場合、プロセス・スケジューリング機能を使用して最適な業務環境でトランザクション要求を処理します。
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業務負荷に合わせて自動でサーバー・プロセス数を制御し、効率的な分散処理を行います。
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トランザクションの並列処理が可能
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設定ファイルやRTSD(Run-Time System Definition)などの機能により、同じアプリケーション・サーバーの全プロセスが同時に同じリソース・サービスを提供することができます。
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1つのアプリケーション・サーバーと補助サーバーは、メインフレームCICSの1つのリージョンにマッピングされます。OSCアプリケーション・サーバーが2つ以上のプロセスで構成されている場合も、内部で同一の設定、リソース設定およびリソース定義を管理します。
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CICSアプリケーション・プログラムを業務ロジックの変更なしに、そのままOSCアプリケーション・サーバーに適用して動作可能
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OSCは、メインフレームのサブシステムに対応するOpenFrame製品を利用して、CICSシステムのリソース・サービスと同等のサービスを提供します。
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CICSが提供するリソースを変更せずに移行できるため、既存のユーザー・アプリケーションを簡単なマイグレーション作業によりオープン・システムで使用できます。
以下は、OSCシステムが提供するサービスの一覧です。
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Abend機能
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TACFによる認証/承認
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チャンネル・コマンド
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環境サービス
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例外
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TSAMによるファイル制御
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インターバル制御
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ジャーナリング
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マッピング・サポート
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名前付きカウンター・サーバー
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プログラム制御
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セキュリティ
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TJESによるスプール・インターフェース
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同期点(Syncpoint)
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ストレージ制御
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タスク制御
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一時ストレージ制御
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端末制御
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一時データ制御
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便利なシステム管理ツールおよびユーティリティを提供
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SysMaster製品と連携し、サーバー・プロセスの状態、サービス数、サービスの処理時間などをモニタリングできます。
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TPモニター・システム管理ユーティリティのtmadminを一緒に活用できます。
tmadminは、TmaxSoftのTPモニター製品Tmaxのユーティリティです。
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GUIのOpenFrame Managerの[OSC]メニューを提供してユーザー利便性を向上
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OSCシステム・ログの表示、サーバーのリソース定義の作成、表示、変更を実行できます。
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OSCサーバーの状態、サーバー情報、および動的な端末情報など、システムの動的な状態表示サービス機能を提供します。
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メインフレームCICS提供のトランザクションに対応する機能をGUIで提供します。
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2. OSCシステムの構造
以下は、OSCシステムの構造を示した図です。OSCシステムは、OSCシステム全体の運用のためのOSCシステム・サーバー、OSCリージョンを構成するアプリケーション・サーバーと補助サーバー、およびOpenFrame Gatewayで構成されます。OSCアプリケーション・サーバーと補助サーバーは、CICSの1つのリージョンに対応します。

2.1. OSCシステム・サーバー
以下は、OSCシステム・サーバーの一覧です。
システム・サーバー | 説明 |
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OSCMGR |
OSCの全リージョンの管理を担当するサーバーです。リージョンの起動と終了、SPI、TX_TIMEの設定機能を提供します。 |
OSCSCSVR |
時間条件が設定されているトランザクションをスケジューリングするサーバーです。アプリケーション・サーバーと内部プロトコルを使用して通信します。 |
OSCDFSVR |
OSCアプリケーション・サーバーのEDF機能を管理するサーバーです。OSCアプリケーション・サーバーやOpenFrame Managerと通信します。 |
OSCMCSVR |
OSCアプリケーション・サーバーをモニタリングするサーバーです。 |
OSCNCSVR |
名前付きカウンターを処理するサーバーで、内部的にUNIXファイル・システムを使用します。OSCアプリケーション・サーバーと内部プロトコルを使用して通信します。 |
OSCJCSVR |
OSC JOURNALMODELリソースのTYPE MVSをサポートするためのサーバーです。 |
OSCMNSVR |
OSCシステムのサーバー・プロセスをモニタリングするための追加サーバーです。サーバー・プロセスをモニタリングしない場合は、設定しなくてもシステムの動作に影響はありません。 |
2.2. OSCユーザー・サーバー
以下は、OSCが提供するユーザー・サーバーです。該当する機能が必要な場合に、ユーザーが追加するサーバーです。
ユーザー・サーバー | 説明 |
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OSCMQSVR |
IBM Websphere MQ製品と連携して、OSCトランザクションのためのキュー・トリガー・モニター機能を提供するユーザー・サーバーです。キュー・トリガー・モニター機能を使用しない場合、設定しなくてもシステムの動作に影響はありません。 |
2.3. OSCリージョン
OSCリージョンは、メインフレームのCICSリージョンに対応する独立した領域です。各リージョンは、互いに異なる設定とリソース定義をベースにユーザー・トランザクション・サービスを提供します。リージョンごとに設定ファイルが存在し、リソース定義はOSC SDテーブルを使用して管理します。
OSCシステムで1つのリージョンは、1つ以上のアプリケーション・サーバー・プロセスと補助サーバーで構成されます。
OSCアプリケーション・サーバーを多数のサーバー・プロセスで設定する場合、各プロセスは同一プログラムのコピーを動的にロードして同時に同じまたは異なるトランザクション・サービスを提供します。OSCアプリケーション・サーバーはマルチタスキングが可能です。多数のサーバー・プロセスが同じサービスを提供するためには、同じリソース定義を使用する必要があります。全プロセスは同一の設定とリソース定義を参照します。エンジンとサーバーの設定ファイルはエンジンの起動時にシステム内部で動的コピーが作られるので、全サーバー・プロセスは起動時間に関係なく同じ設定でサービスを提供します。リソース定義の参照は、指定のRTSD(Runtime System Definition)データベース・テーブルにリソース定義を保存し、それにアクセスすることで実現します。
2.3.1. 補助サーバー
OSCリージョンは、トランザクション・サービスを担当するアプリケーション・サーバー・プロセスの外に、多様な機能をサポートする補助サーバーを提供します。
補助サーバー | 説明 |
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OSCTLSVR |
ログ・タイプのTDQを処理するOSC TDQログ・サーバーです。内部的にUNIXファイル・システムにアクセスし、パフォーマンスを向上させるために内部バッファリングを行います。OSCアプリケーション・サーバーとTCP/IPプロトコルを使用して通信します。 アプリケーション・サーバーがログ・タイプのTDQを使用しない場合は設定する必要がありません。 |
OSCOSSVR |
OpenFrame Managerの多様なサービスを提供するためのサーバーです。OpenFrame Managerを使用する場合は、必ず設定する必要があります。 |
2.3.2. リソース・マネージャー
アプリケーション・サーバー・プロセスは、アプリケーション・プログラムに多様なサービスを提供するために各種リソースを提供します。リソースはリソース・マネージャーによって管理されます。
リソース・マネージャーはサポートする機能の特性によって以下のように区分できます。
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サービス管理リソース・マネージャー
OSCサーバーの多様なサービスを管理します。
リソース・マネージャー名 説明 Program Control
プログラムの実行を担当します。
Task Control
タスク間の接続を担当します。
Interval Control
時間関連の操作を担当します。
Storage
メモリの動的割り当てと返還処理を担当します。
TACF
セキュリティを担当します。
TSQ
一時保存キューを管理します。
TDQ
データ送信キューを管理します。
Journal Control
ジャーナル管理を担当します。
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データ管理リソース・マネージャー
データの保存および表示などを管理します。
リソース・マネージャー名 説明 File Control
TSAMデータセットのアクセスを管理します。
DL/I control
IMS/DBのアクセスを管理します。
NCS
名前付きカウンター・サーバーのアクセスを管理します。
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データ通信リソース・マネージャー
端末や他のシステムとの通信を管理します。
リソース・マネージャー名 説明 Terminal
端末の接続と管理を担当します。
Mapping Support
マップの変換処理を担当します。
Spool
TJESシステムのインターフェースを担当します。
リソースを管理するリソース・マネージャーは共有ライブラリの形でユーザーに提供されます。リソース・マネージャーは、アプリケーション・サーバー・プロセスのバイナリが作成される時に動的にリンクされます。アプリケーション・サーバーの作成時に自動でリンクされるため、ユーザーは関与する必要がありません。ユーザーはEXEC CICSまたはEXEC DLIコマンドを使用して、アプリケーション・プログラムでリソースを利用できます。
各リソースおよびリソース・マネージャーについては、OpenFrame OSC『開発者ガイド』を参照してください。 |
2.4. OSCリージョンの接続
TN3270/TN3270EエミュレーターとEXCIクライアントにより、OSCリージョンに接続できます。
区分 | 説明 |
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TN3270/TN3270E エミュレーター |
パソコンでIBM 3270端末をエミュレーションするプログラムです。このエミュレーターを利用してOSCリージョンに接続し、アプリケーションを実行できます。 まずOpenFrame Gatewayに接続した後、LOGON APPLID(リージョン名)コマンドを入力して特定のOSCリージョンに接続します。 |
EXCIクライアント |
OpenFrame BatchプログラムからOSCシステムにアクセスする際に利用します。EXCIプログラミング・インターフェースを使用します。 |
3. OSCの起動と終了
OSCの起動と終了は、OpenFrameシステム・サーバーの起動/終了段階とOSCシステム・サーバーおよびOSCリージョンの起動/終了段階に分けられます。各段階のより詳しい説明は、OSCの起動と終了を参照してください。
3.1. OSCの起動
OSCの起動は、OpenFrameシステム・サーバーを起動する段階、OSCシステム・サーバーおよびユーザー・サーバーを起動する段階、最後にOSCリージョンを起動する段階に分けられます。
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OpenFrameシステム・サーバーの起動
OpenFrameシステム・サーバーを設定ファイル(ofsys.seq)に従って順次に起動します。
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OSCシステム・サーバーおよびOSCユーザー・サーバーの起動
OSCシステム・サーバーを起動し、設定ファイル(ofosc.seq)に従ってOSCユーザー・サーバーを順次に起動します。
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OSCリージョンの起動
まずOSCリージョンのための共有メモリ、ディレクトリ、ファイルなどのリソースを作成した後、OSCリージョン・サーバーを起動します。OSCリージョンの起動時に、PLT(Program List Table)に登録されている後処理プログラムが実行されます。初期化プログラムの実行が終了すると、OSCリージョンの起動が完了します。
3.2. OSCの終了
OSCの終了は、OSCのリージョンを終了する段階、OSCユーザー・サーバーおよびOSCシステム・サーバーを終了する段階、OpenFrameシステム・サーバーを終了する段階に分けられます。
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OSCリージョンの終了
終了するOSCリージョンのPLT(Program List Table)に登録されている前処理プログラムを実行します。OSCリージョン・サーバーを終了後、OSCリージョンが使用した共有メモリ、ディレクトリ、ファイルなどのリソースを削除し、OSCリージョンを終了します。
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OSCユーザー・サーバーおよびOSCシステム・サーバーの終了
設定ファイル(ofosc.seq)に従って、起動時と逆の順序でOSCユーザー・サーバーを終了し、OSCシステム・サーバーを終了します。
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OpenFrameシステム・サーバーの終了
設定ファイル(ofsys.seq)に従って、OpenFrameシステム・サーバーを起動時と逆の順序で終了します。